bluewoody のミニエッセー・シリーズ
〜英語は旅路の彩り〜 6
翻訳家養成講座を受講してみた…
―日本語の豊かさを知った
翻訳家の養成講座というのをご存知か。
僕は、英検の受験に役立つのではと考えて、この通信講座を受講してみた。
英検には長文読解問題があり、これを制するには本格的に文章を吟味する訓練が有効ではないか−と思ったからだ。
結論からいうと、次の3点で、受講したことは良い選択だったと思う。
@英検の長文を戦略的に読めるようになった。
A英語と日本語の語法、表現の違いにあらためて気付かされた。
B日本語がきわめて豊かな表現力を持つ言語であることを再認識した。
僕が選んだのは、バベルの「翻訳家養成講座 英語本科」。平成11年の7月から1年間の通信教育。テキストを読みながら、月1回、翻訳課題を提出する方式だった。結果的には、7ヶ月ほどで提出を終えた。
各課題は短いものだが、いざ、他人が読んで納得できる訳文をつくるとなると、これはもう大変な作業である。原文の意味を文脈の中でとったうえに、文章が描いている状況に合わせた訳をつけなければならない。こちらが快心の訳文と思って提出した課題(答案)が、添削の赤字だらけで返送されるのはしょっちゅうだった。
課題は、現代小説、エッセイ、論文、果てはコンピューターの話題まで多彩である。短文とはいえ、辞書を引きまくらねば、とても訳せない。いや、引いても訳せない部分も出てくる。そこをなんとかアイデアをひねくり出して、一応の訳文に仕立て上げるのである。
翻訳の前提として、原文を紙に穴の開くほど読み込まなければいけない。そうでないと、とてつもない過ちを犯す恐れがあるからだ。
まあ、ひと口でいえば、初心者にとっては、えらく難儀な作業である。僕は勤め人だから、学生のように自由な時間がたっぷりある身分ではない。出勤前の30分ほどをこの作業に充て、とにかく中断しないようにこつこつと進めてきた。
なんとか最終課題まで持ちこたえられたのは、一定の成績で終了すれば、受講料約10万円のうち、8割が戻ってくるというけっこうな制度があったからだ。
「欲と道連れ」である。結果的に「5級」との評価。とにかく、返還金を申請する資格はもらえたわけだ。
それはともかく、四苦八苦して終了した後、なんともいえぬ気分の良さを感じることができたのは間違いない。メールマガジンでいつも強調している「達成感」を味わえたからだ。加えて、上記の3点のうち、特に「B日本語がきわめて豊かな表現力を持つ言語であることを再認識した」ことは大きいと思う。
たとえば、あるセンテンスを訳すそうとすれば、日本語ではじつに変化に富んだいく通りもの表現が可能なのだ。そのうちどれを採用するかが訳者の技量にかかってくる。その分、難儀な作業にはなるが、逆にいえば、我が日本語は、それほど豊饒な言葉の海であるといえるだろう。
このことを、英文を日本文にする「翻訳」という世界のとば口で肌身に感じることができたのは、僕にとっては僥倖である。通信講座を終えた後、小説や評論を読む時間がちょっとだけ長くなってきた。
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